『 スウィート・スウィーツ ― (3) ― 』
ぴ〜〜〜ひゃら どんどんどん ぴ〜〜〜ひゃらら〜〜〜
なんとも昭和ちっくな音楽が ひょろひょろ流れてくる。
もちろんライブなどではなく 鳥居の中ほどに括りつけられた
スピーカーから ― 録音である。
ここは海に近いとある神社 ― 場所柄 海の守護神 を祀ってあるらしく
金毘羅様系列なのか 船を模した石蔵 や 奉納品などが見られる。
年初めの 初金毘羅 や 夏場の御祭・盆踊り はかなり賑やかで
人出も わさわさ〜〜 地域の一大イベントである。
でも 今は 冬の終わり という微妙〜〜時季
「 あ〜〜〜 やっぱ 少ないかなあ〜〜
」
ジョ―は 神社の鳥居の前で一礼してから ず〜〜〜っと
中を見回している。
今日は毎月の < ご縁日 > の日。
ジョーは 仲間たちをひっぱってやってきた。
初金毘羅 はとうに過ぎ 賑わう季節前だからささやかだけど
まあ それなりに屋台も出ているし 散策する人の姿も結構あった。
「 う〜〜ん あ でも 屋台あるね! よかったあ〜〜 」
彼の隣で 金髪娘がずずず〜〜〜っと身を乗り出している。
「 ・・・ ここ ・・・ ジンジャでしょう?
あの音 なあに?? なんか 身体が動くわあ〜〜
ね カルナバル?? ふふふ 楽しい〜〜 」
さすが ダンサー、 音楽に合わせて ひょい ひょい ひょい と
足が動いている。
「 あ うん 一種のオマツリかな〜〜 」
「 ふうん ・・・ あ なんか いいにおい〜〜 」
「 ふっふっふ〜〜 屋台でてるからね〜〜
さ みようよ 」
「 きゃ♪ あ ・・・ やだ〜〜〜
ジェットったら もう入っていっちゃったわ〜〜 」
「 へ? あ〜〜 ま いいよ 」
気が付けば いつの間にかのっぽの赤毛は
屋台を次々に ふ〜らふらふら ・・・ 覗き歩いていた。
「 ねえ ジョー。 さっき レヴェランス してたでしょ ジンジャの入口で。
あれって ・・・ この国の礼儀なの? 」
「 へ?? レヴェランスって ・・・ ? あ そっか〜〜
なんかさ 神社とかの境内に入る前って 挨拶したいな〜〜 って。
なんとなくお辞儀するんだ おじゃましま〜すって気分・・・
う〜〜ん ぼくの習慣かな〜 」
「 ふうん ・・・ ステキね ♪
じゃ わたしも。 ぼんじゅ〜る ジンジャのかみさま〜 」
彼女はとても優雅に 片脚を引いてちょん、とレヴェランス。
うひゃあ〜〜〜〜 ・・・
神社の神様 びっくり だよ〜〜
でへへへへ 御利益、お願いシマス〜〜
「 ね! 屋台 見ようよ〜〜 」
「 ん〜〜〜 ねえ このいい匂いは なあに? 」
「 あ ほらほら こっちこっち〜〜 」
「 え お店 なの?? わあ〜〜〜 」
茶髪少年は 金髪娘と手を繋いで軽い足取りで参道を進んでゆく。
「 ほう〜〜 ここが 金毘羅さん ですかな 」
「 そうじゃよ まあ 地域の守り神さんってとこかな。
この辺りはもともとは漁師町だったからねえ 」
「 金毘羅さん とは 漁業の護り神? 」
「 ああ 海とか水に関係する全般の護り神様ですかな
あとで神社本殿を見学しましょうや
ここには なかなかの盆栽が揃っていますよ。 盆梅とかね
宮司さんが凝っていて ・・・ 」
「 ほうほう〜〜 それは楽しみじゃなあ 」
「 ふふふ 御宅の若いヒトたちは屋台が目的のようですな 」
「 ま ちょいと息抜きして欲しいんじゃ ・・・
小競り合いでも ああいうヤツは緊張度Maxじゃからなあ 」
「 ふむ ・・・ 大事なく終了でよかったのう 」
「 おう 後始末も 海底火山の活動〜 で済ませられらので な 」
「 ・・・ そうか それはなによりじゃ 」
老博士達は 日向のベンチでのんびり談笑 ―
どこででも見る風景で とりたてて目を留める人もいない。
あ コズミ先生〜〜 コンニチワ〜〜〜
ときどきそんな声も聞こえるが コズミ博士は気軽に手をあげ
挨拶を返していた。
「 ! おいし♪ これ なあに?? うわあ〜〜〜 」
「 あ それ 熱いよぉ〜 気をつけて ・・・ 」
「 きゃ カワイイ〜〜 これ お花? え アメ?? きゃあ 」
「 あああ 零れるよぉ〜〜 」
「 ん〜〜〜〜 おいし〜〜〜〜 ねえねえ どうして? 」
「 ほら ソースが垂れちゃうよぉ〜〜 」
カルメ焼き に りんご飴 わたあめ に 焼きそば(^^♪
屋台から屋台へ 二人はひらひら〜〜〜 宙に浮いているみたいな足取りだ。
「 ね! エンニチ って さいこ〜〜〜〜 」
「 あは ・・・ ねえ 食べ過ぎるなよぉ 」
「 んふふふ たまにはいいわよね〜〜
あ ねえ あそこ みて? 」
「 え? 」
りんご飴が指した方向では ― 目立つ赤毛がチビっこに囲まれていた。
「 ジェットってば〜 ・・・あそこ 射撃屋かなあ 」
「 しゃげきや?? 」
「 そ。 オモチャのライフルで ぱ〜〜ん!
当たったモノ、 お菓子とかオモチャだけど 貰えるんだ 」
「 へえ〜〜〜 ふふ 彼なら楽勝ね 」
「 う〜〜〜 射撃屋さんの営業妨害だよぉ 」
「 ふうん ・・・? 」
フランソワーズは じ・・・っと前方に目を凝らしている。
― どうやら
ジェットは射撃屋で 全然当てられないチビっこのために
キャラメル やら チョコ をヒットさせいるらしい。
高そうな品は わざと外してみせているなど なかなか芸が細かい。
「 ん〜〜〜っと。 ほい よ。 これは おめ〜のだよ ボウズ
こっちは ほい そっちのレディのだ 」
「 え!? わ〜〜〜 ありがと〜〜 おに〜ちゃん 」
「 ・・・ ありがと ・・・あ さ さんきゅ〜〜 」
「 ふっふ〜〜 ゆ〜あ〜うぇるかむ〜〜 ども!って意味さ 」
「「 ふうん ・・・ 」」
彼はチビらの そんけ〜のマナザシ を一身に浴びている。
「 あ! わたしも〜〜〜 ちょっと撃ってくるわ!
ほら あのフイギュア、欲しいのよ
ね これ 持ってて! ・・・ 食べちゃ イヤよ 」
ジョ―の手に 食べかけのリンゴ飴 やら ゴム風船ヨーヨーを押し付け
フランソワーズは 跳んでいってしまった。
「 あ ・・・ あ〜〜 はいはい ・・・
お〜〜っと ・・・ 」
彼は両腕に なにやら不安定な形状のモノを複数抱え
よろよろと参道を歩いていた。
コツン コツ ・・・ コツ コツ
珍しくアルベルトがゆっくりと歩いている。
革手袋の手には ワタアメ の袋。
「 あは アルベルト〜〜 それ 買ったんだ?? 」
「 ああ? これか。
作ってるところが面白くてな 思わず買ってしまったが。
これは 要するに砂糖の雲 だな 」
「 あ〜〜 そうかも〜〜 食べてみた? 」
「 いや。 手がベタベタになりそうだ 」
「 上手に食べれば 平気だよ〜
あ アルベルトって甘党だったんだね 」
「 はあ? 俺は左党だ 」
「 え だってさ 羊羹が好きだって フランが言ってたよ 」
「 ようかん? ああ あの黒くて濃厚な甘味のカタマリか 」
「 そ! よく食べられるね〜 ぼく 苦手なんだ・・・
なんか頭 痛くなりそうな甘さだよね 」
「 ふん。 アレをな 薄く切ってオン・ザ・ロックのツマミだ。
グレートは ブランディのツマミにしてるぞ 」
「 ・・・ よ 羊羹で 飲む わけ?? うっへ〜〜〜
そりゃ どう食べようとも 自由だけど さ ・・・ 」
「 ふん。 美味い と思って食べるのが一番だ。 」
「 そ〜〜なだけどさ ・・・ おっと〜〜 」
ジョーは 左腕のリンゴ飴を慌てて持ち直した。
「 なんだ そのべたべたは 」
「 は〜〜 なんとか・・・ あ? コレ?
フランのリンゴ飴さ たべかけでさあ〜 」
「 ・・・・ 」
アルベルトは 黙って肩を竦めた。
「 リンゴ飴の買い手はどうした 」
「 え ああ あそこんトコでさ ジェットと ぱんぱ〜〜ん って。 」
「 ぱんぱ〜ん? ・・・ ああ 射撃屋か 」
彼はちょいと賑わっている方向を見た。
「 へえ ・・・ ドイツにもあるんだ? 」
「 あの手のゲームはどこにでもある。
ドイツでも春のカーニバルの時には いろいろ露店がでる 」
「 へ〜〜〜〜 ドイツでもエンニチかあ 」
「 ― 似たようなモノさ 」
「 ・・・ ふうん ・・・ 」
コツ コツ コツ ズ ズ ズ
一見 続き柄不明な?二人が 神社の境内をのんびり歩いてゆく。
「 ― どうして俺が司令塔なのか わかるか 」
銀髪が 唐突に尋ねた。
「 え そりゃ ・・・ トシだから ・・ ぁ ごめん 」
「 ― 経験値 だ。 性能はお前が最新最強だ。
しかし 戦闘に関しては 経験はゼロ以下だろうが。
銃のひとつも持ったことのないヤツに 戦闘の指揮はとれん 」
「 そりゃ ・・・ だってさ ぼくんトコじゃ 銃なんて持っちゃ
いけないんだもの 」
「 ふん。 俺の国でも 銃なんざ必要とするヤツは
少数派だった 俺だって触ったことはなかった 」
「 あ ・・・ うん ・・・ 」
「 俺の指は ― 天上の音を奏でるためにある と信じていた
いや 今も 信じている。 」
「 ・・・ アルベルト ・・・ 」
「 本来ならそんな経験値は 上げてほしくない。
だが 俺達の宿命かもしれんが ―
いずれ お前が本当の司令塔になるだろう 」
「 え ・・・・ 」
「 しっかり目を見開き 耳を澄ませていろ。
そして ― 全てのデータをしっかり検証しておけ。
それが 司令塔となるための務めだ。 」
「 ― ずっとアルベルトがやればいいじゃんか〜〜
ぼくは サブ・パイロットがむいてるよぉ 」
「 いいか ジョー。 お前は 009 なんだ。 」
「 ・・・・ 」
「 お前にしたら 理不尽かもしれんが。
まあ これも運命だ と思って呑み込むんだな 」
「 ・・・・ ぼくは ・・・
そんなコト ・・・ 望んで なくて 」
「 全員 同じだ 」
「 ・・・・・・ 」
「 今できる最前を尽くす しかないだろうが 」
「 ・・・ う ・・・ 」
「 いい加減 腹、括れ。 それがオトコっていうものだ。 」
「 ・・・ あ さべ〜つはつげん〜〜 せくはら〜〜 」
「 なんだと?? 」
「 ・・・ いえ なんでも・・・ ないっス 」
茶髪ボーイは 俯いて石畳の参道を蹴り蹴りしている。
「 それと ― 」
「 ・・・ なに 」
「 その靴! ちゃんと履け。 カカトを潰して引きずるな。 」
「 へ ・・・? 」
「 だらしない。 ぴしっとしろ ぴしっと! 」
「 ・・・ な〜んかさ〜〜 風紀委員のセンセ― みたいダ 」
「 なんだ。 」
「 ・・・ いえ なんでもないっス 」
「 ふん。 ヒモもちゃんと結べ。 いいな 」
「 へ〜〜い ・・・ センセ〜 」
「 ― 見ろ 」
「 へ?? 」
ブツクサ言ってた島村クンは アルベルト先生の指す方向に
思わず 目を向けた ― そこには ・・・
ジェットは 射撃屋の外でチビの前にしゃがみ込んでいる。
「 い〜か〜〜 こうやってな リボン結びの輪っか同士
もいっかい結ぶ。 そ〜すっと 絶対に解けないんだぜ 」
「 ん〜〜〜 ・・・・ こう? 兄ちゃん 」
「 お うめ〜ぞ ボウズ。 」
「 えへへへ 〜〜 」
「 ヒモ 引きずってるとよ、 行くぜ! ってときにひっからまって
コケたらど〜する?? お笑い じゃね〜んだ 」
「 そ っか 」
「 おめ〜のカワイイ妹、護るとき オレが相手だっ! って
飛び出して ずる〜〜 どてん じゃな〜〜 」
「 ・・・ うん 」
「 きっちり履いて 前 向いてさっさか大股であるけ。
そ〜れが カッコイイオトコ だぜ 」
「 うん!!!! こう〜〜〜 ? 」
「 そ〜そ〜〜 ほらあ レディもほれぼれ見てッぜ〜〜
な? ちっちゃなレディ〜 兄ちゃん カッコい〜だろ? 」
「 うん !!! 」
へ え ・・・・
ジェットって あんな風にも笑うんだ?
・・・ なんか ・・・
カッコイイ じゃん?
・・・ なんか ・・・
い〜やつじゃん ?
ジョーは 自分のコトじゃないのに ほんわか温かい気分になっていた。
「 ― で? お前は ? 」
アルベルト先生は ごく普通の声で島村クンに訊いた。
「 今 履き直して ヒモも結びなおしましたっ ・・・ 先生 」
「 よし。 ( センセイ?? ) 」
004の顔に戻ると 彼はさっさか歩き始めた。
「 あ ・・・ 待って〜〜 」
「 あの植木屋のブースにいる。 さっさと来い 」
「 ん〜〜〜 持ちにくいモン ばっかでさ〜〜 」
ジョーは ぶつくさ言いつつも笑顔で仲間の後を追いかけた。
「 え〜と フランは ・・・ あ まだ射撃屋かあ 」
「 おい お前、ちょいと保護者、やってこい。
・・・ なんかベソかいてるぞ 小生意気なフランス娘は 」
「 え!! フラン〜〜〜〜 」
りんご飴 も ソース煎餅 も なんもかんも一緒くたに抱きしめると
ジョーは 一目散に駆けて行った。
「 ・・・ ふん。 彼女がいる限り アイツは大丈夫だな 」
肩を竦めると アルベルトは縁日の外れに向かった。
そこでは比較的 広いスペースに植木屋と 骨董屋が店を並べている。
「 日本版 蚤の市 ってヤツか ・・・
ほう 盆栽もあるんだなあ 」
ワタ飴の袋を持ったコワモテの銀髪は 鉢物やら骨董品の間を
のんびり巡り始めた。
― さて 件の射撃屋では ・・
「 ふ フラン〜〜〜 どうしたのっ!? 」
ジョーは息せき切って駆け付けると まっすぐ彼女の元に飛んでいった。
「 ジョー〜〜〜〜 あ。 トレーナー べたべた よ 」
「 え? ・・・ あ〜〜 あ 」
トレーナーには リンゴ飴とソース煎餅 が張り付きオブジェになっていた・・・
「 だは ・・・ 」
「 ね あそこに古着ショップもあったから 着替え、見てゆく? 」
「 そうだなあ あ フラン どうしたの? 」
「 え? なにが。 」
「 だって ― な 泣いてるって ・・・ アルベルトが 」
「 え・・・ あ! そうなの そうなのよ〜〜〜〜
ねえ 聞いて ジョー! 」
「 ハイ。 」
「 あのね ! ぜ〜〜〜んぜん 当たらないのぉ〜〜〜 」
ズイ。 彼女は 射撃屋のオモチャ・ライフルを突き出した。
「 はあ ・・・ 」
「 ジェットは ぱんぱ〜〜〜〜ん って ロクに見ないでも当ててたのにぃ
わたし ちゃ〜〜んと狙ってるのに 全然ダメなのぉ 」
「 ・・・ はあん ? 」
ジョーは 押し付けられたオモチャを ちらっと見た。
「 ね? スーパーガンの的中率では ダントツでわたしが一位なの!
ジェットなんてね いっつもテキト〜に撃つから いっつも半分も
当たらないのに〜〜〜 ねえ ねえ どうして?? 」
「 ― あ〜 これ オモチャ だからさ 」
「 だから?? 」
「 この照準器もオモチャ。 これで照準は合わないよ 」
「 え ! 」
「 ジェットみたく てきと〜に感覚で撃ったほうが当たるんじゃね? 」
「 え〜〜〜 そうなのぉ〜〜〜
わたし あの フィギュアが欲しいのぉ〜 わたしの推しなのよ 」
「 あ じゃあ ぼく やってみよっか・・? 」
「 ジョー。 いっつも全然当たらないじゃない〜〜〜 」
「 ・・ あ うん まあ ね
水鉄砲 とか 銀玉 なら自信あんだけどぉ 」
「 もう〜〜 頼りにならないわね〜〜
いいわ ジェットに頼むから。 」
「 あ・・・ 」
ジョーは りんご飴とソース煎餅・トレーナーのまま
取り残されてしまった・・・
「 お〜い ちょっと〜〜 」
射撃屋のオッサンが ジョーを裏に手招きした。
「 兄ちゃん 兄ちゃん ちょっと 」
「 へ?? あ スイマセン〜〜 なんか邪魔して 」
「 いいって いいって。 あの赤毛の兄ちゃんはダチかい 」
「 あ そ〜です 商売邪魔して〜〜 すんません〜〜 」
ジョーは ぺこぺこ謝った。
「 だ〜からいいって。 あの赤毛兄ぃは < わかってる >。
安いモンばっか 当ててったし。
こっちの金髪美人は アンタの姉ちゃんかい? 」
「 ・・・ え あ ・・・ まあ ・・・ 」
「 へへへ あの姉ちゃんが無駄玉 山ほど撃ってくれてよ〜〜
美人さんが悔しがってるからって店の前 賑わって〜〜
ありがとよ! 」
「 ・・・ へ ?? 」
「 いつもの倍くらいの売り上げさ ワルイね〜〜〜 」
「 あ ・・・ そ ですか〜〜 」
「 ウン。 あ これ。 ほんの気持ちだけど。
アンタの姉ちゃんにプレゼントしてや〜〜 」
オッサンは フィギュアの箱を差し出した。
「 え いいんですか 」
「 いい いい。 ぜ〜んぜん♪
なあ 兄ちゃんら 旅行者サンかい 」
「 あ いえ ・・・ あの最近越してきて 町外れですけど 」
「 ふ〜〜ん なあ 来月の御縁日サンにも来てやあ
頼むなあ〜〜 」
「 は はあ ・・・ 」
オッサンはほくほくしつつ 店に戻っていった。
そこでは ― 赤毛の兄ィ が 金髪美人 と口げんかしていた・・・
「 はあ?? おめ〜 自分で あてろや 」
「 だ〜から〜〜〜 オモチャのライフルは 撃ったこと ないの 」
「 たいしてかわんね〜よ 」
「 変わるわよっ 」
「 へいへい 女王サマ 」
「 なんですって?? 」
「 なんでもね〜よ〜〜 ・・・ ライフル 貸しな 」
― はたして 射撃屋のオッサンの < ほんの気持ち > は
大歓迎してもらえた。
「 な〜んか 買い物の山になっちゃったねえ 」
古着屋でブランド物のトレーナーをみつけ ジョーはご機嫌だ。
「 そうねえ うふふ〜〜 楽しかったわあ 」
「 あ リンゴ飴とソース煎餅・・・・ ゴメンね 」
「 あら いいのよ。 コレがあるし〜〜 」
フィギュアの箱を抱え 水風船のヨーヨーを揺らし
フランソワーズもご機嫌ちゃん。
「 アルベルト〜〜 それ持ちにくいでない? 」
「 ん? あ〜 まあなあ 」
彼は腰くらいの丈がある木を ぶら下げている。
「 それ なあに 」
「 ミカンだと。 庭に植えたら楽しいぞ
数年後には 庭からオレンジがとれるんだ 」
「 へ え 〜〜 ( そ〜いうシュミ だったんだ?? ) 」
「 あ 博士〜〜 それ 持ちますぅ 」
ジョーは ご老人たちの側に飛んでいった。
二人とも 盆鉢を抱えているのだ。
「 あ いやあ〜 すまんですなあ ・・・ 」
「 おお ありがとうよ・・・ さすがに 重くてね 」
「 これ ・・・ ボンサイ ですよね 」
「 左様左様。 ワシのは四季咲きの木瓜じゃよ 」
「 ワシは 初心者向けに 紅葉さ。 秋が楽しみじゃなあ 」
「 皆 ここに荷物、置いてくれ 」
ジェットが 一行の前に立った。
「 オレが 飛行便 すっから。
まとめ担いで飛んでってやるぜ! こんくらい カルイ カルイ〜 」
え〜〜〜〜〜〜〜〜 !!!
・・・ 全員で彼を止めるのに苦労した・・・
コトン コトン コツ コツ ト ト ト
両手に荷物を抱えつつ全員で の〜〜んびり歩いて行った。
「 ・・・ ぶるる やっぱりまだ風は冷たいわね 」
フランソワーズは もこもこのマフラーを引っ張り上げ
顔の下半分を隠した。
「 う〜ん はる〜は な〜のみ〜〜の かぜ〜のさむさや〜〜♪ 」
ジョーが裏声でなにやら奇妙なメロディを歌う。
「 ?? それ なあに 」
「 あ〜 こんな時期の歌さ。 まだ寒いですね ・・・って歌 さ 」
「 へえ ・・・ そうよねえ 手が冷たいし・・・
ああ おなか すいたわあ〜〜 」
「 え いっぱい食べてたじゃん 」
「 ん〜 そうなんだけど ・・・ 温かいもの、欲しいな 」
「 缶コーヒーでも買ってこようか 」
「 う〜ん ・・・ ああ 焼き栗 が食べたいなあ 」
「 焼き栗? あ それなら 天津甘栗 買おうよ
駅の売店でも売ってるよ 」
「 あまぐり? ・・・ あ アレ 美味しいけど
今、わたしの食べたい焼き栗 とはちょっと違うの ・・・ 」
「 ?? やきぐり? 」
「 そうなのよ。 真冬にね マロン・ショー って
熱々の栗だよ〜〜って 言いながら街角とかで売ってるの。
熱くて ふはふは言いつつ食べるのよ 」
「 へえ〜 熱々の焼き栗 かあ 〜
あ それって似たの、あるよ、日本でも 」
「 え そうなの?? 」
「 ウン! あ 今はスーパーでも売ってるかも 」
「 え〜〜 スーパーで?? 」
「 うん♪ ぼくも食べたい〜〜〜 帰りに寄ってゆこうよ 」
「 きゃ 嬉しい〜〜 」
はたして ―
二人は寄り道をし ほかほか焼き芋 を買って並んで齧りながら
の〜〜んびり 歩いた。
「 おいし〜〜〜〜〜 ♪ ほっかほか〜〜 あま〜〜い 」
「 これってさ ウチでも作れるんだぜ 」
「 え そうなの?? ・・・ オーブンとか
ピザ窯が必要なんじゃないの ? 」
「 の〜〜の〜〜! 落ち葉とイモがあれば おっけ〜さ 」
「 え!? そうなの??? 」
「 ホントはさ〜〜 外で焚火とかしたらマズイんだけど・・・
ウチの辺りならいいかな〜〜
帰ったら裏庭でやろ〜よ < 焼き芋 > ! 」
「 ・・・ お庭で できるの?? 」
「 そ! まずは 落ち葉掃除しよ〜
えっと〜〜 サツマイモ ウチにあるっけ? 」
「 ええ 昨日 美味しそう〜な太ったの、買ってあるわ 」
「 おっけ〜〜〜♪ 」
ジョーはもう満面の笑みで フランソワ―ズの手をちょん・・・と取り
坂道を上っていった。
ガサ ガサ −−−
「 ねえ ねえ もうできた?? 」
「 う〜〜ん まだまだ ・・・ 今さっき火をつけたばっかだよ〜 」
「 はやく焼けないかなあ〜〜 」
フランソワーズは 暖炉の火掻き棒で焚火をつんつん 弄っている。
「 あ あんまり突かないほうが はやく焼けるよぉ 」
「 ・・・ う〜〜ん ・・・ あ いい匂い してきた! 」
「 ホントだね〜〜 でかいイモだからちょっと時間
かかるかも 」
裏庭で 落ち葉を集め焼き芋作りの焚火を始めようとしてたのだが。
「 おいおい ちょっと待ちなさい 」
博士が 勝手口から出てきた。
「 はい? あ 火の用心の水、ちゃんと用意してます〜〜 」
ジョーは 傍らのバケツを指した。
「 おう そうか。 いやいや それも大切だがな〜〜
一応 今 戸外での焚火は禁じられているじゃろうが。 」
「 ・・・ ウチなら わからないかな〜〜って ・・・ 」
「 これこれ。 その考えはよくないぞ。
なぜ焚火が禁じられているか??
ダイオキシンを発生させてはならんのだ。
で コレを使う 」
バ・・・・ ! 博士は銀色の傘 みたいなモノを広げた。
「 ダイオキシン吸着装置じゃ。 これで有害な煙を除去する。
ああ じっくりイモは焼けるから安心しろ 」
「 あ そうですか〜〜 それなら いいや 」
「 ふうん ・・・ 焚火はダメなの・・・ 」
「 環境汚染 ってね あ ほらほら いい具合に燃えてきたよ 」
「 うわあ〜〜 うふふ 火っていいわねえ 」
「 ウン ・・・ なんかじわ〜〜っと ・・・ 」
かきねの かきねの〜〜〜 ♪
ジョーは 楽しそう〜〜に ほんわかした歌を口ずさむ。
「 んんん〜〜〜♪♪ 〜〜〜♪ 」
フランソワーズもメロデイをすぐに覚えて ハミングしてくれた。
ほわ〜〜〜ん ふわ〜〜〜〜ん
「 ! ねえ いい匂い ・・・これ お芋の?? 」
「 ん〜 そだね〜 」
「 あ! バター 持ってくるわ! コーヒーも! 」
フランソワーズは 勝手口に駆けて行きすぐに戻ってきた。
「 ねえ〜〜 コレも入れときましょ 」
ホイルに包んだ 球体 をいくつか焚火に参加させた。
「 芋の追加かい 」
「 うふふ ちがうイモですけど〜〜 じゃがいも です!
アルベルトが好きでしょ〜〜 」
「 あ いいね〜〜 ほくほく・ジャガイモ も美味しいよね 」
「 でしょ? 今日のオヤツは お芋祭♪ 」
「 いいね〜〜〜 」
「 うむ うむ 」
博士も破顔している。
さて その日のテイー・タイム は 焼き芋たいむ となり
アルベルトは 熱々のジャガイモに薄切り羊羹を挟み
なんとも美味しそうに平らげたのだった。
赤毛のアメリカンは 定番! ケチャップ を塗りたくった。
・・・ うっそ ・・・
ぼく なんか胸ヤケしてきた〜〜〜
・・・ なんか ・・・
美味しそう ね? わたしも やってみよっかな〜〜
お互いの心のウチ?を 知ることもなく
ジョーとフランソワーズは 仲良く焼き芋にバターをつけたり
チーズを乗せたり楽しんでいた。
ギルモア邸の金髪のお嬢さんは ご機嫌である。
「 ・・・ 誰にも言わないけど。 サイボーグでよかった!
こんなに甘いもの、食べても 太らないわよね〜〜 きっと 」
「 二ホンに来てよかったわあ〜〜〜〜
な〜〜んて美味しいスウィーツばっかりなのぉ〜
ゴハンもオイシイし、 故郷のチーズも食べられるし
― ああ オイシイ日々〜〜 って 最高ね ! 」
― そんなある日 ・・・
博士のお使いで コズミ邸に出向いたのだが。
「 おや お嬢さん。 ほっぺがまあるくなりましたな
結構 結構〜〜 お嬢さんはふっくら がよろしいよ 」
彼女の顔を見るなり コズミ老は目を細め柔和な顔をますます
綻ばせるのだった。
「 ! ・・・ そ そう です か ・・・ 」
え〜〜〜〜〜〜 ウソ〜〜〜〜〜〜〜〜〜
わたし さいぼーぐ なのにぃ〜〜〜
だ ダイエット・・・ううん 絶食しなくちゃ!
パリジェンヌの微笑に ― 盛大にヒビが入っていった とさ☆
Last updated : 03.07.2023.
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***************** ひと言 ***************
ど〜でもいいハナシですけど これで 終わりです☆
なんてことない内容で スミマセン <m(__)m>